沈黙の国民病・歯周病~歯の终生健康を守るための科学ガイド

🕒 2025-09-08

歯周病は、歯垢(プラーク)が原因で歯の周囲の組織に起こる慢性炎症性疾患であり、成人が歯を失う最大の原因です。初期段階では自覚症状に乏しく、気付きにくいため「沈黙の病気」とも呼ばれます。本稿では、歯周病の原因、進行段階、リスク、そして効果的な予防と治療法について科学的に解説します。口腔健康への理解を深め、歯の终生健康を実現することを目的としています。

一、 歯周病とは何か 歯周病は、歯そのものではなく、歯を支える組織(歯肉、歯槽骨など)が冒される病気です。主な原因は、歯の表面に付着する「歯垢(プラーク)」です。プラークの中に棲む細菌が毒素を出し、歯肉に炎症を引き起こします。これを放置すると、炎症は徐々に深部の歯槽骨にまで広がり、最終的には歯がグラグラになり、抜け落ちてしまうこともあります。

二、 歯周病の進行段階と症状 歯周病は進行性の疾患であり、その過程は主に以下の段階に分けられます:

  1. 歯肉炎(Gingivitis):初期段階。炎症が歯肉に限局している状態です。ブラッシング時の出血、歯肉の腫れや赤みが主な症状です。この段階では歯槽骨の破壊はなく、専門的なクリーニングと適切な口腔清掃により完全に治癒可能です。
  2. 歯周炎(Periodontitis):炎症が歯槽骨や歯根膜にまで及んだ状態。歯と歯肉の間に「歯周ポケット」という隙間ができ、深くなっていきます。口臭、歯肉の退縮(下がり)、歯の動揺などの症状が現れます。一度失われた歯槽骨は元に戻りませんが、治療により進行を食い止めることが可能です。
  3. 重度歯周炎(Advanced Periodontitis):歯槽骨の大半が失われ、歯は明らかにグラつき、場合によっては移動したり、自然に抜け落ちたりします。咀嚼機能に重大な支障を来します。

三、 歯周病のリスクと全身への影響 近年の研究で、歯周病は口腔内だけの病気ではなく、全身の様々な疾患と深く関わっていることが明らかになってきました。歯周病の原因菌や炎症物質が血流に乗り、全身に影響を及ぼすためです。

  • 糖尿病:相互に悪影響を及ぼします。歯周病はインスリンの働きを妨げ血糖コントロールを困難にし、逆に糖尿病患者は歯周病にかかりやすく、重症化しやすいです。
  • 心血管疾患:動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高めます。
  • 呼吸器疾患:口腔内の細菌が肺に入り込み、誤嚥性肺炎の原因となることがあります。
  • 早産・低体重児出産:妊婦が重度の歯周病の場合、早産や低体重児出産のリスクが高まることが報告されています。

四、 歯周病の予防と治療

  • 効果的な予防法:適切なブラッシング:1日2回以上、バス法などの適切な方法で、歯と歯肉の境目を重点的にプラークを除去します。フロス・ interdental brush(歯間ブラシ)の使用:ブラッシングだけでは歯の表面の約6割しか磨けません。歯と歯の間の清掃には、デンタルフロスや歯間ブラシが必須です。定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア:3~6ヶ月に1度の歯科検診を受け、超音波スケーラーなどの専門器具による徹底的なクリーニング(PMTC)で、歯石や磨き残しのプラークを除去します。
  • 主な治療法:基本治療(歯周初期治療):歯周ポケットの検査、歯石除去(スケーリング)、および歯根面の滑沢化(ルートプレーニング)を行い、歯周ポケット内の歯石とプラークを除去します。外科治療:重症例では、歯肉を切開して感染組織を直接除去し、失われた骨の再生を図る手術(歯周外科手術)が必要な場合があります。メインテナンス(定期管理):治療後、再発を防止するために、生涯にわたる定期的なチェックとケアが不可欠です。

まとめ 歯周病は、罹患率が高く、危険性も大きいですが、予防可能かつコントロール可能な慢性疾患です。早期発見・早期対応が最も重要です。日頃から適切なセルフケアを実践し、それに加えて定期的なプロのケアを受けることが、歯周病を予防・管理し、健康な歯を终生保つためのカギとなります。歯周病を効果的に管理することは、口腔の健康だけでなく、全身の健康を守る上でも重要な要素です。